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【緊急レポート】 2026年4月、実運送事業者への労基署臨検が本格化  ― 運送業特化社労士が解説する監督重点ポイント ― 小林弘和

実運送事業者への労働基準監督署調査が始まります。

2024年問題に関する実運送事業者への労働基準監督署の臨検調査は、この2年間、行政庁が先ず荷主・元受け対策を実施していたことから、行われていない状況となっていました。

いよいよ、2026年4月から実運送事業者に対する労基署の臨検調査が行われる状況となっています。

今回は、これに備えての「労働基準監督署調査の留意点」について述べていくことと致します。

1.労働基準監督署の調査の種類

労働基準監督署の調査(臨検監督)には、定期監督、申告監督、再監督等の種類があります。

1)定期監督

最も一般的な調査で、当該年度の監督計画により労働基準監督署が調査対象を選択し、法令全般に渡って調査をします。以前は、事前に調査日程を連絡してから行われていましたが、近年は、予告無しで行われることが一般的になっています。

2)申告監督

労働者からの申告があった場合に、その申告内容を確認するための調査です。労働者からの申告による場合と定期監督の場合では、例えば、「残業代の未払い」が明らかとなった場合の是正勧告の内容が異なることがあり、申告監督の場合は、賃金の時効期間である2年間を遡っての再計算および支払いが求められるのに対して、定期監督の場合は3箇月間を遡っての再計算および支払いに止まる場合があります。

3)再監督

監督の結果、是正勧告を受けた場合に、その違反が是正されたかを確認するためや、是正勧告を受けたにもかかわらず指定期日までに是正報告書を提出しなかった場合に再度行われる調査です。

指定期日までに是正報告を提出しなかった場合や是正報告書を提出したにもかかわらず実際には改善されていない場合、一時的に改善されたが元に戻ってしまったような場合には、厳しい指導の対象となってしまいます。

2.臨検での調査内容の重点ポイント

実際の調査の際に労働基準監督官が調査する内容のなかで特に重点となるポイントがいくつかありますが、今回は労働時間関係について述べさせていただきます。

(1)タイムカード等の労働時間の記録

*チェックポイント

  • タイムカード等の労働時間の記録があるか?
  • 労働時間の切捨て処理を行っていないか?
  • 労働時間の自己申告制を行ってる場合、申告時間と客観的な記録に大きな差異がないか?→労働時間の切捨てを行っている場合や自己申告と客観的な記録に大きな差異がある場合には、その時間分がいわゆる「サービス残業」に該当するものものとして、賃金の支払いが求められおそれがあります。

(2)変形労働時間制の労使協定等

*チェックポイント

  • 変形労働時間制を採用している場合は、採用手続が適正に行われているか?
  • 変形労働時間制の運用が適切に行われているか?
  • 変形労働時間制における割増賃金の対象時間の把握が適切に行われているか?

→変形労働時間制を採用している場合、原則としてあらかじめ特定したとおりに労働させることが必要となります。

業務の都合により、日常的に労働時間や労働日の変更が行われているような場合には、変形労働時間制に該当しないものと判断されることになり、その場合1日8時間、1週40時間を超える時間について割増賃金の支払いが必要となります。

その結果、賃金の支払額に差額が生じた場合には、いわゆる「サービス残業」に該当するものとして、その差額に該当する賃金の支払いが求められことになります。

(3)時間外・休日労働に関する協定届(36協定)等

*チェックポイント

  • 36協定の締結・届出が行われているか?
  • 36協定締結にあたっての労働者の過半数代表者は適切に選任されているか?
  • 36協定記載の労働時間の延長限度基準が遵守されているか?
  • ドライバーについて「改善基準告示」違反がないか?

→労働者の過半数代表者は、労働基準法に規定する協定を締結する者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の民主的な手続きで選出された者であり、管理監督者に該当する者でないことが要件とされています。労働者の過半数代表者の選任が適法に行われていない場合には、その労使協定は無効なものとされてしまいます。なお、労使協定についても、就業規則と同様に周知が必要とされています。

また、36協定において定められた労働時間の延長限度を遵守しなければなりません。定められた延長時間を超えて時間外労働を行わせた場合、労働基準法違反の罰則(6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金)が適用されることになります。

特別条項付きの36協定が締結されている場合であっても、限度時間を超えて時間外労働を行わせることができるのは、協定期間の2分の1以下の期間(例:1年間の期間を定める36協定の場合6回以内)に限られていますので、2分の1の期間を超えて限度時間を超える時間外労働を行わせている場合にも、同様に労働基準法違反の罰則が適用されることになります。

(4)賃金台帳

*チェックポイント

  • 賃金台帳に記載すべき事項が記入されているか?

→記載すべき事項は、労働者の氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外労働、休日労働および深夜業の各労働時間数・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額・賃金の控除額となります。

(5)割増賃金の支払い

*チェックポイント

  • 時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金の支払いは適切か?

→適法に把握した労働時間に基づき、適法な計算方法で算定した額以上の割増賃金額が支払われていなければなりません。

  • 割増賃金の計算方法は適法であるか?

→割増賃金の基礎となる賃金は、通常の労働時間または労働日の賃金額とされていますが、この賃金額には、基本給だけでなく諸手当も原則としてすべて含まれることになります。ただし、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類の賃金についてだけは、割増賃金の計算の基礎に算入しなくてもよいことになっています。

(6)最低賃金額

*チェックポイント

  • 最低賃金額以上の賃金が支払われているか?

→最低賃金は時間給で定められていますので、月給制で最低賃金額以上の賃金が支払われていることを確認するためには、月給の額を月の所定労働時間で除して時間給を計算して比較することになります。ただし、最低賃金との比較をする場合には、臨時に支払われる賃金・1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)・時間外労働、休日労働、深夜業に対する割増賃金・最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、家族手当、通勤手当)は除外して計算をしなければなりません。

(7)年次有給休暇の付与日数と管理状況

*チェックポイント

  • 年次有給休暇の取得記録が管理されているか?

→年次有給休暇の5日付与義務に対応して「年次有給休暇管理表」等により年次有給休暇の取得状況を管理するようにすることが求められます。

(8)安全衛生管理体制

*チェックポイント

  • 労働者数に応じて必要な安全衛生管理体制が構築(総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医のうち必要な資格者の選任)がなされているか?
  • 労働者数に応じて必要な委員会(安全委員会・衛生委員会)が組織されているか?
  • 委員会の運営は適切に行われているか?

(9)健康診断等の実施

*チェックポイント

  • 健康診断が適切に実施されているか?
  • 特定業務従事者の健康診断を適切に行っているか?

→深夜業に6箇月で24回以上従事する者等に対しては、6箇月以内ごとに1回、定期に一定の項目(定期健康診断と同じ項目です。)について医師の健康診断を行わなければなりません。

  • 健康診断実施後、医師の意見聴取を行っているか?

→健康診断の結果、異常の所見があった労働者については、健康診断を時失した日から3箇月以内に、医師の意見を聴かなければなりません。また、聴取した医師の意見については、健康診断個人票に記載しなければなりません。

  • 健康診断実施後の措置を行っているか?

→医師の意見を勘案してその必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません。

  • 長時間労働者への面接指導等を実施しているか?

→法定労働時間を超える時間外労働が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合または産業医が労働者に対して勧奨した場合には、医師による面接指導を実施しなければなりません。

  • ストレスチェックを適切に行っているか?

→常時使用する労働者が50人以上の事業場の場合、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期に医師等によるストレスチェックを行わなければなりません。

  • メンタルヘルス対策を講じているか?

→「心の健康づくり計画」の作成・実施等のメンタルヘルス対策を講じることも求められる場合があります。

2.臨検調査対応の留意点

労働基準監督署の臨検調査の対象となった場合に最も留意すべき事項としては、

      ①現状については、ありのままを答え虚偽の報告はしないようにすること
      ②是正報告についても誤った報告をすることなく、改善が進んでいない事項については正直に報告し、時間的な猶予をもらうなどの方法をとるようにし、本来あるべき改善を行うようにすること

ということになります。

虚偽の報告が明らかになった場合などには、徹底的に厳格な調査が行われることなり、悪質な事案と判断されて労働基準法違反等で刑事告発が行われることもありうるため、誠実かつ真摯に対応を行うことが肝要である旨を十分に理解しておくことが必要です。


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