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運送業における「点呼」とは何か 2025年法令対応・点呼デジタル化 勤怠管理を正しく理解するために

この記事を読んでわかること

  • 運送業における「点呼」の法的な位置づけと基本的な役割
  • 2025年の法令対応を踏まえた点呼業務の最新動向
  • 点呼のデジタル化・IT点呼で押さえるべき要件
  • 勤怠管理・労務管理との関係性と実務上の注意点

この記事を読むメリット

  • 制度の誤解やグレーな運用を避け、法令リスクを下げられる
  • 現場任せになりがちな点呼業務を整理して理解できる
  • システム導入や運用改善を検討する際の判断材料が得られる
  • 経営者・管理者・実務担当者それぞれの視点で全体像を把握できる

1. なぜ今「運送業 点呼」が注目されているのか

近年、「運送業 点呼」「点呼 デジタル化」「IT点呼 要件」「点呼 勤怠管理」といったキーワードの検索数が増加しています。

その背景には、単なる業務効率化にとどまらない、制度・監査・社会的要請の変化があります。

象徴的な出来事として、日本郵政グループにおける点呼義務違反問題が挙げられます。長年「実施しているはずの業務」と考えられてきた点呼が、実際には形骸化していた可能性が指摘され、「点呼は行っていればよいものではない」という認識が業界全体に広がりました。

さらに、国土交通省による監査姿勢も明確に変化しています。2024年4月からの改善基準告示の適用強化により、点呼は安全確認だけでなく、労働時間・拘束時間管理の起点として、より厳密に確認されるようになりました。

2025年以降に本格化する物流関連法制では、荷待ち時間の削減、賃金構造の是正、エビデンスに基づく説明責任が運送事業者に求められています。

こうした背景から、経営者・運行管理者・労務担当者の間で、次のような疑問が生じています。

    • 制度上、どの点呼方式が位置づけられているのか
    • IT点呼や自動点呼は、どの事業者でも利用できるのか
    • 点呼と勤怠管理は、どこまで連動させる必要があるのか
    • 監査や元請への説明では、何が問われるのか

本記事では、制度(法令)・実務(現場)・事例(実在企業)の3つの視点から、運送業における点呼の現在地と、現実的な対応の考え方を整理します。

2. 点呼の法的位置づけ|なぜ点呼は必須業務なのか

点呼は、貨物自動車運送事業法および貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づき、すべての一般貨物自動車運送事業者に義務付けられている業務です。

点呼の主な目的は、次のとおりです。

    • 運転者の健康状態の確認
    • 酒気帯びの有無の確認
    • 運行上の注意事項および指示の伝達
    • 事故防止および輸送の安全確保

点呼は、安全な運行を開始するための前提条件であり、形式的な実施や簡略化は認められていません。

※本記事は主に一般貨物自動車運送事業者を対象としており、軽貨物事業などでは一部取り扱いが異なる場合があります。

3. 点呼を実施しない場合のリスク|行政処分と事業継続への影響

点呼が適切に実施されていない場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。

    • 運輸支局による監査での是正指導・行政処分
    • 事業者評価点数の低下
    • 事業改善命令や事業停止処分
    • 事故発生時の管理責任の追及

近年の監査では、単に点呼記録が存在するかどうかだけでなく、次の点が厳しく確認されています。

    • 記録内容が実態と一致しているか
    • 実施方法が制度要件を満たしているか
    • 記録の保存方法や保存期間が適切か

点呼は「書いてあればよい」ものではなく、実態を伴う業務として求められています。

4. 2025年時点における点呼方式の制度的整理

2025年時点で制度上位置づけられている主な点呼方式は、以下のとおりです。

重要なのは、これらがすべて同列に認められているわけではなく、原則・例外・条件付きという整理で理解する必要がある点です。

4-1. 対面点呼(原則)

対面点呼は、運行管理者または運行管理補助者が運転者と直接対面して実施する方式であり、制度上の原則となる点呼方法です。すべての事業者が実施可能であり、現在も基本となる方式です。

4-2. 遠隔点呼(条件付き・例外的運用)

遠隔点呼は、音声および映像通信機器を用いて、離れた場所から実施する点呼方式です。

利便性は高いものの、無条件で認められている方式ではありません。主な要件として、以下が求められます。

    • 点呼実施者が有資格者であること
    • 双方向の音声および映像による確認が可能であること
    • 点呼記録が適切に保存されること
    • 非常時の対応体制が整備されていること

遠隔点呼は例外的な運用手段として位置づけられており、恒常的な運用については慎重な検討が必要です。

4-3. ICT点呼(IT点呼)|条件を満たした事業者に限り恒常運用が可能

ICT点呼(IT点呼)は、国の定める要件を満たした仕組みを用いることで、恒常的に非対面で実施できる点呼方式です。

主な前提条件には、次のようなものがあります。

    • Gマーク(安全性優良事業所)の取得
    • 運行管理体制および社内規程の整備
    • 国土交通省が定める技術要件の充足

ICT点呼は、導入すれば自由に使えるものではありません。導入後も、常に適法性が維持されているかどうかが監査対象となります。

4-4. 乗務前・乗務後自動点呼(限定的・補助的運用)

自動点呼は、システムを用いて一定の確認を自動化する方式として制度化が進められています。

ただし、自動点呼については、次の点を正しく理解する必要があります。

    • 対象業務や運用範囲は限定されていること
    • 点呼の責任がシステムに移転するわけではないこと
    • 完全な無人化を意味する制度ではないこと

自動点呼は、あくまで点呼業務を補助する手段であり、違反時の責任主体は事業者および管理者にあります。

5. 点呼デジタル化による実務上の効果|3社の事例

5-1. 重量物・特殊輸送を行う運送事業者(神奈川県)

重量物輸送やトレーラー輸送、海上コンテナ輸送を行う同社では、早朝・深夜帯における点呼対応が慢性的な負担となっていました。運行管理者が常駐しなければならず、少人数体制の中で管理負荷が集中していた点が課題でした。

また、紙で管理していた点呼記録と勤怠情報が分断されており、監査時には過去の記録を照合する作業に多くの時間を要していました。

点呼と勤怠管理を整理し、デジタル化を進めた結果、点呼記録を即座に確認できるようになり、勤務実態の把握が容易になりました。監査対応時の資料準備にかかる工数も大幅に削減されています。

5-2. 協力会社として業務を行う中小規模の運送事業者(埼玉県)

協力運送会社として業務を行う同社では、元請企業から労務管理や安全管理に関する説明を求められる機会が増加していました。しかし、点呼記録と勤怠情報が十分に整理されておらず、都度手作業で資料を作成する必要がありました。

点呼および勤怠記録を一元的に整理したことで、元請からの問い合わせに対して、根拠となる資料を迅速に提示できるようになりました。その結果、管理業務にかかる負担が軽減され、現場対応に集中できる環境が整っています。

5-3. 都市部で専門配送を行う運送事業者(東京都)

酒類配送を主業務とする同社では、業務特性上、特に高い法令遵守意識と安全管理水準が求められていました。点呼時刻と実際の労働時間の整合性が重要な管理テーマとなっており、記録の正確性が常に課題でした。

点呼と労働時間を紐づけて管理する仕組みを整備したことで、記録のばらつきや属人化が解消されました。現在では、誰が確認しても同じ基準で管理状況を把握できる体制が構築されています。

6. 点呼が整うと勤怠管理が整う理由

点呼は、業務開始および終了の起点であり、労働時間管理の入口に位置づけられます。

点呼時刻が不明確な場合、勤務時間の正確な把握ができず、残業時間や拘束時間について合理的な説明が困難になります。

そのため、点呼を正しく管理することは、適正な勤怠管理を行うための前提条件といえます。

7. 2025年以降を見据えた点呼デジタル化の考え方

点呼デジタル化は目的ではなく手段です。

    • 一度にすべてを導入する必要はありません
    • 事業規模や管理体制に応じて段階的に進めることが重要です
    • まずは制度理解を最優先にすべきです

正しい順序で取り組むことが、安全で持続可能な事業運営につながります。

本記事の位置づけについて

本記事は、運送業向け勤怠管理・給与計算システムを提供する立場から、点呼制度そのものではなく、点呼を起点とした労務管理・勤怠管理の整理という観点でまとめたものです。

当社が提供する運送業向け勤怠管理システムでは、外部の点呼システムと連携することで、点呼時刻や実施記録を勤怠管理・労働時間管理に活用できる仕組みを整えています。

その一例として、テレニシ株式会社が提供する総合クラウド点呼システム 『IT点呼キーパー』との連携により、点呼記録を勤怠情報と突合・一元管理する運用が可能となっています。

点呼と勤怠管理は本来、切り離して考えるべきものではありません。制度上の点呼要件を満たしたうえで、その情報をどのように労務管理に活かすかが、今後の運送事業者にとって重要なテーマとなります。

本記事は、そのような検討を進めるうえでの基礎資料として活用いただくことを意図しています。

個別事業者における適法性判断や具体的な運用可否については、必ず運行管理者や専門家に確認することを推奨します。

なお、2026年2月には、テレニシ株式会社との合同による、無料のオンラインセミナーを予定しています。本セミナーでは、トラック新法・改善基準告示への対応を前提に、点呼制度の正しい理解と、点呼情報を勤怠管理・労務管理にどのように接続して考えるべきかを、制度面・実務面の双方から整理する予定です。

※無料合同セミナーの詳細は下記にてご案内しています。

トラック新法(トラック適正化二法)、2024年問題対応 点呼と勤怠 オンラインセミナー

出典・参考資料

    • 国土交通省「貨物自動車運送事業法」
    • 国土交通省「貨物自動車運送事業輸送安全規則」
    • 国土交通省「IT点呼に関する運用ガイドライン」
    • 国土交通省「改善基準告示(2024年4月改正)」
    • 公益社団法人 全日本トラック協会 各種解説資料

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