運送業の労働時間 労働時間の現状と展望

運送業の労働時間 ~労働時間の現状と展望~

運送業は現代社会において不可欠な存在となり、特にトラック輸送は新型コロナウイルス感染症の影響で宅配需要が急増し、市場規模は約19兆円にまで拡大し、「生活と経済のライフライン」として重要な産業となっています。一方で、この拡大の裏にはトラックドライバーの長時間労働や過酷な労働環境が潜んでいます。この記事では、トラックドライバーの労働時間の実態、そして将来への展望について詳しく解説します。

目次

トラックドライバーの時間管理について

運送業界で働くトラックドライバーは、働き方改革関連法だけでなく、自動車運転者の労働時間の改善を図る基準、いわゆる改善基準告示にも従わなければなりません。働き方改革関連法は2019年4月に施行されましたが、トラック業界では依然として長時間労働が慣習となっており、この改革の対象には一部特例が設けられています。

働き方改革関連法による残業時間の上限

この法律によれば、残業時間の上限は原則として月に45時間、年に360時間までとされています。ただし、年単位の変形労働時間制を導入する場合は、月に42時間、年に320時間が上限です。特別な合意があっても、年間720時間、複数月平均80時間(休日労働を含む)、月に100時間未満(休日労働を含む)を超えることは許されません。月80時間は、1日あたり約4時間の残業に相当します。なお、原則的に月45時間を超えることができるのは、年間6か月までとされていますが、自動車運転の業務においては年960時間の上限が適用されます。この場合、月45時間を超える回数の制限がなく、休日労働の時間は含まれません。

改善基準告示について

 

自動車運転者の労働時間改善基準

自動車運転者に対する改善基準告示では、実態に即して以下の基準が設けられています。

拘束時間

  • 1日原則13時間、最大16時間
  • 1か月原則293時間、労使協定を結んでいる場合は最大320時間
  • 1年間の拘束時間は3516時間

休息期間

  • 1日の継続休息は8時間以上
    拘束時間と休息期間は24時間を基準に計算
  • トラック運転における運転時間と休憩の規定
  • 1日の運転時間は2日平均で9時間まで
  • 1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間まで
  • 連続運転時間は4時間まで
  • 運転開始後4時間以内または4時間経過直後に、30分以上の休憩が必要。最低でも1回あたり10分以上の休息を確保し、分割も可能。
  • 休日労働は2週間に1回が限度
  • 特例としての休息期間分割や2人乗務、隔日勤務、フェリー乗船
    休息期間の分割が必要な場合、一定期間における全勤務回数の2分の1を限度として、休息期間を分割して与えることができます。分割された休息期間は1回あたり最低でも継続4時間以上、合計10時間以上。

    2人以上が同時に1台の自動車に乗務する場合、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、休息期間を4時間まで短縮できます。

    隔日勤務の特例では、2日における拘束時間が21時間を超えないようにし、夜間に4時間以上の仮眠時間を確保する場合は2週間について3回まで、拘束時間を24時間まで延長できます。勤務終了後には継続20時間以上の休息期間を与えることが必要です。

    フェリーに乗船する場合は、フェリー乗船時間は原則として休息期間として扱います。ただし、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの時間の2分の1を下回ってはなりません。

以上が、トラック運転者の働き方と労働時間に関する基準や特例です。これらの規定は、トラックドライバーの労働環境の改善と安全確保を目的としています。これにより、長時間労働や過酷な労働環境を和らげ、ドライバーたちが安全に業務に従事できるようになることが期待されています。

参照:トラック運転者の労働時間等の 改善基準のポイント
https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/content/000016434.pdf

長時間労働の現状

運送業界においては、トラック運転者を含む労働者たちが、長時間にわたり運転や荷役作業に従事しています。厚生労働省の報告書によれば、トラック運転者の労働時間に関する実態調査が行われ、その結果が以下の通りです。

  • 拘束時間の実態
    通常期においては、対象となるドライバーの77.5%が「13時間以下」で働いており、16.7%が「13時間超~15時間以下」、4.1%が「15時間超~16時間以下」となっています。繁忙期においては、「13時間以下」が69.6%で最も多く、「13時間超~15時間以下」が21.0%、「15時間超~16時間以下」が6.3%となっています。特に長距離運行に従事する運転者に焦点を当てた場合、「13時間以下」が37.7%、「13時間超~15時間以下」が31.1%、「15時間超~16時間以下」が19.5%となっています。

  • 残業時間の実態
    残業時間においては、通常期において全体の22.1%が「2時間以上~3時間未満」、21.9%が「1時間以上~2時間未満」、21.3%が「時間外労働なし」となっています。繁忙期においては、「2時間以上~3時間未満」が24.3%で最も多く、「1時間以上~2時間未満」が21.1%、「時間外労働なし」が16.1%となっています。特に長距離運行に従事する運転者に焦点を当てた場合、「2時間以上~3時間未満」が26.6%で最も多く、「3時間以上~4時間未満」が17.6%、「6時間以上」が15.8%となっています。

これらの結果は、運送業界において労働者が依然として長時間労働に従事していることを示唆しています。労働環境の改善と働き方の見直しが求められています。

参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883704.pdf

荷主とトラック運送事業者の協力によるトラックドライバーの労働条件改善

トラックドライバーの労働条件改善に向けて、荷主とトラック運送事業者が協力し、問題解決のための検討の場を設けることが重要です。

労働環境改善の責任と取り組み

トラックドライバーはトラック運送事業者の雇用下で働く社員であり、その労働環境改善の責任はまずトラック運送事業者にあります。しかしながら、トラック運送事業の性格上、「他人の需要に応じて貨物を運送する」という特性からくる課題も存在します。荷主の理解や協力がなければ、改善を進めることが難しい現実があります。

  • 荷主とトラック運送事業者の連携
    そのため、改善に向けた取り組みを進める際には、まず荷主とトラック運送事業者との間で、実際の課題や改善の必要性についての問題意識を共有することが不可欠です。この問題意識を醸成するために、荷主とトラック運送事業者が協力し、一つのテーブルについて検討の場を設けることが大切です。

  • 関係者全体を巻き込んだ実効的な検討
    ただし、荷主といっても発地と着地で異なるケースや、トラック運送事業者が元請、下請など様々な形態で関わっているケースもあります。より実効性を高めるためには、輸送に関わる全ての関係者をメンバーとした検討の場を設け、労働条件に関する意見交換を定期的に行うことが望ましいです。

労働時間、特に荷待ち時間や荷役時間の実態を把握するポイント

ドライバーの労働条件を改善するためには、労働時間を正確に把握し、問題のある領域を特定することが不可欠です。以下は、そのためのポイントです。

  • 正確なデータ把握方法の検討
    荷待ち時間や荷役時間を正確に把握するために、以下の方法を検討します。

  • デジタコの活用
    運行中のデータはデジタコで一定程度把握可能ですが、積み卸しや附帯作業に関するデータは追跡が難しい場合があります。

  • スマートフォンアプリの活用
    荷待ち時間や附帯作業の実態を簡便に把握するために、スマートフォンのアプリを活用することが効果的です。

時間管理のためのツール導入の検討

労働時間を管理するためには、専用のツールやアプリを導入することが役立ちます。

  • デジタルタイムカード
    ドライバーが労働時間を正確に記録できるデジタルタイムカードを導入することで、作業時間の把握がスムーズになります。
  • ルート管理ソフトウェア
    荷役や待ち時間を含む最適な運行ルートを提案するソフトウェアの導入で、無駄な時間の削減が可能です。

データ共有とコミュニケーションの重要性

把握したデータは荷主とトラック運送事業者との検討の場で共有されるべきです。具体的な実態をデータとして提示し、荷主とのコミュニケーションを通じて理解と協力を促進します。

  • 労働条件改善の提案
    データを元に具体的な労働条件改善の提案を行い、共通の目標に向けて協力を得ることが重要です。

 これらのポイントを踏まえ、実際のデータを正確に把握し、共有することで、労働環境の改善に向けた具体的なアクションを進めることが可能となります。

最後に

現状の問題点として、長時間労働が依然として横行しており、特に長距離運行のドライバーにおいては、拘束時間や運転時間の制約が厳しい状況が続いています。また、荷待ち時間や荷役時間の管理が難しく、これが長時間労働の一因となっています。法規制は存在するものの、実務での適用や遵守には課題が残ります。そのため、荷主とトラック運送事業者の連携が不可欠であり、双方が一体となって問題意識を共有し、具体的な改善策に取り組むことが求められます。

将来展望では、テクノロジーの活用が強調されています。デジタコやスマートフォン、システムを活用して、荷待ち時間や荷役時間を効率的に管理する仕組みの構築が期待されます。同時に、法規制の実効性向上が求められ、関係者との連携や労働環境の変化に柔軟に対応するための仕組み整備が必要です。トラックドライバーの声を積極的に取り入れ、トラックドライバーが働きやすい環境を整備することが大切です。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。今回の情報が皆様の理解を深める一助となれば幸いです。勤怠ドライバーは2024年問題に向け、働く時間の見える化や効率的な勤怠管理をサポートするツールとして、皆様のお役に立てることを願っております。無料のお試し利用もご用意しておりますので、ご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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