2026.1.8

はじめに
多くの運送会社で聞かれる、ある一言
運送業界で営業・監査・労務相談の現場に立つと、非常によく耳にする言葉があります。
「うちは社労士がいるから大丈夫です」
この言葉自体は、決して間違いではありません。
顧問社労士がいることは、運送業経営において大きな強みです。
しかし同時に、この言葉が
“思考停止のサイン”になってしまっているケースも、
少なくないのが実情です。
本記事では、
「社労士がいるから大丈夫」とは何を意味するのか
なぜその認識がズレることがあるのか
本当に“大丈夫”な会社の共通点は何か
を、運送業の実務と経営判断の観点から整理します。
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1.「社労士がいるから大丈夫」という言葉の正体
1-1 | この言葉に含まれる3つの期待
この一言には、多くの場合、次のような期待が含まれています。
法令は守れているはず
問題があれば社労士が止めてくれるはず
何かあっても相談できるから安心
これらはいずれも、社労士の本来の価値に基づく正当な期待です。
1-2 | 問題は「確認が止まる」こと
しかし、この言葉が繰り返されることで、
現場の実態確認をしなくなる
データを見直さなくなる
「社労士に任せている」という理由で議論が止まる
という状態が生まれることがあります。
ここに、経営リスクの芽があります。
2. 社労士が「判断できない」状況とは何か
2-1 | 社労士は“実態を作る立場”ではない
社労士は、
制度を設計する
法的リスクを判断する
専門家です。
一方で、
勤怠を入力する
日々の運行を管理する
給与計算の元データを作る
のは、会社側の役割です。
つまり、
実態が曖昧な状態では、社労士も正確な判断ができません。
2-2 |「任せている」の中身が共有されていない
よくあるのが、
社長は社労士に任せているつもり
管理者は現場判断で回している
社労士は提出された資料を前提に助言している
という、三者の認識がズレた状態です。
このズレは、問題が起きるまで表面化しません。
3. GU社労士法人・O先生の視点
運送業に特化した社労士法人先生は、この点について次のような実感を持たれています。
3-1 |「社労士がいる=実測できている」ではない
O先生が関与した運送会社でも、
顧問契約はある
就業規則も整っている
にもかかわらず、
労働時間を正確に把握できていない
給与計算の前提が曖昧
というケースは少なくないそうです。
3-2 | 給与改訂の相談が“止まる”理由
O先生は、給与改訂の相談を受ける際、必ずこう伝えます。
「まず労働時間を正確に把握してください。それができないと、給与改訂はできません」
これは、
社労士が非協力的なのではなく
責任ある判断ができないから
です。
4.「社労士がいるから」で見落とされやすいポイント
4-1 | 就業規則が“実態と乖離”している
書類上は整っている
しかし現場では守られていない
この状態では、
規則は存在するが
経営を守る力を持たない
という結果になります。
4-2 | 給与体系が複雑化しすぎている
運送業では、
歩合給
各種手当
が多くなりがちです。
顧問社労士が関与していても、
実態データが不足している
経営側の要望が優先されすぎる
と、後から説明が難しい給与体系になることがあります。
5. 「本当に大丈夫な会社」がやっていること
5-1 |「社労士に確認する前」にやっていること
安心できている会社ほど、
自社の勤怠・給与データを把握している
問題点を言語化できている
状態で社労士に相談します。
これにより、
議論の質が上がる
制度設計が現実的になる
という好循環が生まれます。
5-2 | 社労士を“判断の最終工程”に置いている
本当に機能している会社では、
実態把握
課題整理
複数案の検討
を行ったうえで、社労士に判断を仰ぎます。
この役割分担が、「社労士がいるから大丈夫」を事実に変えています。
6.「思考停止」を防ぐための経営者視点
6-1 |「任せている」ではなく「共有している」か
経営者・管理者が確認すべきなのは、
社労士が
自社の実態を
どこまで把握しているか
という点です。
6-2 | 社労士との関係は“協業”
社労士は、
代行者
免罪符
ではありません。
経営判断を支える専門パートナーです。
おわりに
「社労士がいるから大丈夫」を“本当”にするために
「社労士がいるから大丈夫」という言葉は、条件が揃えば、確かに正しい言葉です。
その条件とは、
実態が把握されている
データが共有されている
社労士と議論ができている
ことです。
顧問社労士の力を最大化するのは、制度ではなく、会社側の姿勢と管理体制です。
自社の状況に当てはめて考えたい方へ
本記事の内容を読んで、「自社の場合はどう考えればいいのか」と感じた方へ。
運送業の実態を踏まえた労務管理の考え方について、個別にご相談を承っています。
まずは状況の整理だけでも大丈夫です。お気軽にお問い合わせください。
本記事はシリーズ「社労士がいるから大丈夫」は本当か?の第3弾|なぜ「社労士がいるから大丈夫」で思考が止まるのか です。






















































































